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「ワールドワイドウェブ」 -アトリエN- [アトリエN]

 リンゴ・モモ・カキ・ミカンなどの木になる果物は、中の種子が成熟してくると赤色系に色づき『さあ、甘いよ・食べごろだよ』と呼びかける。赤色の波長は長いので、遠くまで届くし、緑を背景にすると更によく目立つ。
 彼らがサインを発する相手は、実は鳥である。
 哺乳動物は歯を持っているので、まかり間違えば大切な種子さえバリバリと噛み砕きかねないし、鳥のように遠くまで移動することはできない。
 果実は他のいきものに食べられるために熟するのではなく、自らの種子を広範囲にばらまいて欲しいのである。その為には遠くまで飛ぶことができ、歯も持たず、消化管の短い鳥に食べてもらいたいのだ。
 それに多くの哺乳動物は赤い色を認識することが出来ない。赤い色を認識できるのは、人を含めた類人猿ぐらいであるそうだ。
 トウガラシも赤く色づく。完熟したトウガラシの赤も、鳥へのサインである。赤く色づいたトウガラシが甘くなることはなく、未熟なものよりもむしろ辛くなるが、多くの鳥は辛味を感じないそうである。
 現実の世界にアンパンマンは存在しない。
 他の生物に体の一部を提供するのは、自分の子孫を地上にばらまきたいからなのだ。
 だから、自分の意思に反してむやみに食べられたくない植物は、トゲや毒で武装したり、イネ科植物のようにガラス質の物質で葉や茎の表面をコーティングしたりする。
 また、毒とは言えないまでも苦味や辛味の成分、タンニンのように渋みを感じさせたり消化を阻害する、いわば『いやがらせ物質』で身を守る。コーヒーや茶のカフェイン・生姜のシンゲロール・ワサビのシニグリン・成熟手前のゴーヤが持つククルビタシンなども、虫や動物の食害から身を守るいやがらせ物質なのである。
 ところが、そのいやがらせをまるで受けつけない生き物がいる。いわずとしれた人間である。
 コーヒーを一日に何杯もがぶ飲みし、タバコのニコチンに耽溺し、未熟なピーマンの苦みに舌鼓を打ち、強烈な毒成分を持つワサビさえも、わざわざ田で栽培したりする。植物としてはたまったものではない。
 が、しかし、やられっぱなしにならないのが植物のえらいところである。
 歴史学者のユヴァル・ノア・ハラリは《サピエンス全史》という著書のなかで、「小麦は人類を使って自らを世界中に広めた」と述べているが、ヒトを利用しているのは小麦だけではない。
 ヒトの持つ圧倒的な輸送力(それはとても鳥などの及ぶところではない)を利用してタバコもジャガイモもコーヒーも地球上に分布を広めた。
 家畜の飼料に紛れ込んだ雑草の種が、ある日突然に、遠く離れた別の大陸の平原に大群落を作ったりもする。
 したたかで賢い植物たちは、究極の移送手段を人類に見出したようである。
 近い将来には、自らの翼としてウェブすら利用し始めるかも知れない。
 どんな手をを使って?
 さあ、そこまでは私にもわからネット。
  N田さん

リンゴの木.jpg
リンゴの木。提供:「写真素材足成」(http://www.ashinari.com)

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