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ドクダミ [アトリエN]

 なな山に住まいされる土地神のおひとり、中谷主命(ナカノタニノヌシノミコト)は、ある日、こう申された。
 「シブキよ、そなたはどうしてそんなにも臭いのだ?」
 シブキというのはドクダミの古名である。ドクダミが答えて云うには
 「これはデカノイルアセトアルデヒドという物質(もの)のにおいでありまして、私めが天より授かったものでございます」
 命「なに、天からとな?して、そのわけは?」
 毒「この中の谷には、私の体に害をなすカビや菌がおりますゆえに」
 命「それならば、カビや菌のおらぬ処へ行けばよいではないか」
 毒「私めはこのような日陰の湿った場所でなければ生きられませぬ」
 命「ふうむ、メンドクサイやつじゃのう」
 「へびぐさ」「てぐされ」その他数々の異名を持つこのドクダミ、もともと陰湿地を好む植物ゆえに進化の結果としてデカノイルアセトアルデヒドを獲得したのか、それとも初めからその物質を有していたので、生存競争に有利な小暗い湿った場所に身を落ち着けるに到ったのか、浅学な私には分からない。
 薬草である。化膿止め・下痢止め・神経痛改善・動脈硬化・アトピー・利尿便通・高血圧予防など。薬効の範囲は広い。
 馬の十種類の病気を治すというので「十薬」という別名もある。
 葉を陰干しにしたものをお茶にして飲むと体に良いと言われているが、カリウムを多く含むため、腎機能の低下している人にはお勧めできない。高カリウム血症の誘因になりかねないからである。
 わが国ではどちらかと言えばマイナーな印象の強いこの草が、欧米では園芸植物として大人気だというから、わからないものだ。
 タイやベトナムなど東南アジアにはドクダミ料理があり、臭みもなく、なかなかイケルらしい。今度試してみたいものだ。
 それはさておき、この植物は正常な生殖が出来ず、クローンの種子で殖えるため、花粉を必要としないという。
 花は中心部の柱のような部分に集まっており、白い花びらのように見えるものは虫を呼び寄せるために葉が変化したものだそうだ。
 ちょっと待ってくれ、花粉を必要としないのに、なぜそんな手の込んだしかけが要るというのか?
 メンドくさいやつじゃのう・というミコトの声がまたもや聞こえてきそうだが、いつの日か普通の植物として当たり前に生殖して殖える・そんな日が来るのを夢見てじっと待ち続けているのかもしれない。
       N田さん

ドクダミ.png
ドクダミ。提供:「写真素材足成」(www.ashinari.com)



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